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Khamai Leon 1st EP『風の谷』インタビュー

  • 執筆者の写真: leon khamai
    leon khamai
  • 4月24日
  • 読了時間: 11分

更新日:4月25日



「予感」

――4月30日(水)に1st EP『風の谷』がリリースされるということで、今回はEPを彩るシングル3曲についてお話を伺いつつ、現在のKhamai Leonが向かっている方向をお話いただけたらと思っています。ということで、早速2024年11月にドロップされた「予感」から。この楽曲はチェロを取り入れた音像や、リリックとアンサンブルが衝突しながら連動していくクライマックスをはじめ、前作『IHATOV』以降、あるいはバンドの独立以降のモードを指示する作品だと受け止めていますが、どのようなところから着想していったんですか。

「予感」はまさにインディペンデントで活動し始めた自分たちを表す1曲だと思うんですけど、実は曲の土台自体は『IHATOV』の時に存在していたんです。ただ、『IHATOV』の曲たちが全体的に世界観が強いというか、ポップスライクではないじゃないですか。それで抜け感の強い「予感」が浮いてしまっていたので、収録を辞めたんですよね。で、今回バンドとしての話し合いをしている中、この曲が発掘されて。Khamai Leonができる目一杯のポップスを意識して作っていきました。


――チェロを取り入れたのもポップスを志向するため?

チェロに関しては、米光(米光椋・Ba)が通販サイトで激安チェロを突然買ってきたのがキッカケで。笑 安価な分、本当は良い音も出にくいはずなのに、実際に鳴らしてみたら豊かな音色だったんで、急遽入れてみることにしたんです。だから偶発的に生まれたんですけど、タイトな前半からシンフォニックな後半に広がっていく流れは僕ららしさにも繋がったんじゃないかな。


――これまでKhamai Leonはスコアで曲を固めてから制作を進めていたじゃないですか。でも今は、チェロのお話も含め、流動的に、言い換えればジャムセッション的に楽曲を完成させた感覚もあって。その変化は狙ったものなんですかね。

もちろん、まだまだ楽譜ベースで進めていくこともあるんですけど、やっぱりライブを重ねてきたことが大きくて。パフォーマンスのオープンな感じが作品にも反映されていますし、「予感」以降から楽曲のクレジットをKhamai Leonに変更したのもそういう理由なんですよ。スタジオに入って音を鳴らして全員で作っていく過程を大事にしていますね。


――いわゆるバンドらしい制作の手法もですし、「meteor」のアグレッシブな音像もそうですけれど、今の皆さんは明確にバンドらしさを大切にしていると思うんです。そうした中、「予感」でポップを打ち出そうとしたのはどうしてだったのでしょう。

めちゃくちゃ単刀直入に言ってしまえば、やっぱり売れたいんで。でも、それだけじゃなくて『a hazy view from IHATOV』ツアーをやったり、ライブを重ねるうちに、今の世界観だけじゃ伝わらないなって思ったんですよね。僕らは使っている楽器も多いし、難しそうなことをやっているように見えるから、シンプルに「好きです」って言ってもらうことが簡単ではなくて。どこかで客観的にというか、「私たちとは違った表現をしているバンドなんだ」みたいな目線で見てもらうことが多い。でも、もっと普通に近くにいたいから。リスナーにも、対バン相手にも、当事者としても自分たちの音楽を素朴に楽しんでもらいたい。そういう意味で分かりやすく届けることが必要なんじゃないかなと。


――今のお話は、以前語っていただいた「1人1人の生活の記憶に入り込むような曲を作っていきたい」という内容とも重なると思うのですが、よりポップスを志向する、さらに届けることを大事にしようと思ったキッカケは何だったんですか。

9月に『ONE PARK FESTIVAL 2024』のメインステージに出させてもらったことが1つのキッカケだったと思います。主催の方と色んな話をしたことが凄くモチベーションになりましたし、応援してくれている方の期待に応えたい思いがどんどん強くなって。あともう1つ話をすると、実は「予感」は夏ごろにリリースしようと思っていたんですよ。でも、この作品では今までの自分たちと何も変わらないと思い、一から撮り直した。勇気を持ってリライトに踏み切れたのは、間違いなく自分たちの世界観を親しみやすくしていきたかったからなんです。


――「予感」では<はっと 過ぎて 光った さざめく 淡い予感>とこれからを想起させる言葉が繰り返されつつ、<有限のその時まで終演の燈まで>ともともと尾崎さんが大切にしてきた死生観や生きていることの儚さ、美しさの滲むリリックが綴られています。楽曲のベース自体は『IHATOV』の段階で存在していたこと、2024年の夏以降楽曲を作り直したことも伝えてもらいましたが、この歌詞はどのようなところから生まれてきたんですか。

まず大前提として、僕はネガティブじゃないようにというか、賑やかな人間であるように心がけて過ごしているんですよね。でも、ふと1人になった瞬間に孤独が強調される瞬間があるじゃないですか。どこまでいっても独りであることからは逃れられないし、人間は生まれて死ぬだけ、みたいな感覚も持ち合わせている。その上で「予感」では、ひらめきやスパークする感覚、何かが変わるかもという直感を見逃すなよって言いたかったんです。確かに現実的に考えると、「こうしたいな」「こんなことができたら楽しんだろうな」と浮かんだ思いをシャットアウトするしかないのかもしれない。それでも「そういう直感を信じてやっていこうぜ」って。


「meteor」

――では、続いて2025年1月に発表された「meteor」について聞かせてください。イントロのマッシブなベースや五つ打ちのリズムを織り交ぜた中盤の展開をはじめ、Khamai Leonの引き出しの多さがバンド然としたスタイルで提示されている楽曲だと感じているのですが、この作品はどのような思いから生まれてきたのでしょう。

「予感」をリリースした後、もっと分かりやすいとまでは言わないまでも、さらに面白いものを作りたいなと思うようになったんです。


――直感的に受け取れるものというか?

あぁ、そうですそうです。なので「meteor」はもともと別々で存在していたデモを融合させながら作っていったんですけど、イメージとしてはより強いポップスに挑戦していきました。


――「予感」以上にストレートに楽しめる楽曲というか、一聴で「これは凄いぞ」と思わせる作品に踏み込もうと思えたのは、先ほどお話いただいた「売れたい」という野望と不可分なんですかね。

流石にこれまでやってきた音楽と毛色が変わるので、戸惑いや躊躇いもあって。これまで聴いてくれていた人が離れてしまうキッカケになるかもしれないと思いながらも、そこを怖がっていたらこの先には進めないなと。なので、リリースする際はかなり緊張しましたね。


――その緊張や不安を超えてでも、「meteor」で強固なポップ精神を示す必要を感じていた。

やっぱり独立をしてから4人で過ごす時間が増えたことで、同じ釜の飯を食う感覚が強くなったというか、ビジネス的な側面を無視できなくなるじゃないですか。それこそ、自分たちで運営した『KONZERTO』(自主企画ライブ)が上手くいって、こういう風にやっていけば自分たちにとってもプラスになるんだと分かりましたし。そういう意味で、広げていくための要素として商業的なものを作る必要があったんだと思います。



――カウンターカルチャーと密接なバンドという表現を選ぶ上で、商業的、ビジネス的な要素とのバランスを確保していくことは非常に難しいと感じているのですが、両者の均衡に対してはどのように考えていらっしゃいますか。

確かにとても難しい問題ですが、僕らはなんだかんだ言ってミーハーなんですよね。何を大事にするかはバンドによって全然違うし、それを否定するつもりは一切ないけれど、せっかくなら大きいステージに立ちたい。性格的にも泥臭くやっていくのがあっているんで上を目指しながら、自分たちが楽しくできる表現を模索していきたい。Khamai Leonという名前を使わせてもらっている以上、変化幅の大きさもキャラクターになると思うし、実験的なことを本気で届けていきたいなと。


「セゾン」

――3月19日にリリースされた「セゾン」は、フルートの音色やファルセットを用いた尾崎さんの歌声、ロマンチシズムが凝固した歌詞をはじめ、Khamai Leonの劇画的なトーンが表れている1曲だと受け止めています。「予感」「meteor」が攻撃的だった分、「セゾン」の宿す柔らかさが引き立てられているように感じていますが、この楽曲に対してはどのような手ごたえをお持ちですか。

Khamai Leonって主語が大きいじゃないけど、抽象的かつ包括的なことを言っているバンドだと思うんです。だから、個人の主観的な感想を吐き出すことがほとんどできなくて。でも実際は、めちゃくちゃ色んな人を考えながら曲を作っているし、もっとストレートに気持ちを伝えたかったんですよね。「セゾン」はそういう思いを素直に書けた1曲な気がしています。


――おっしゃっていただいた通り、「セゾン」はラブソングと言い換えても良いほどに熱情が滲んでいる楽曲で。これまで「直球な表現をしてみたい」と思っていた一方で、概念的なものを描くこととなっていた背景は何だと思います?

音楽をそういう存在として受け止めていたからかな。やっぱり僕たちのルーツであるクラシック音楽は時間的な距離が離れている分、全体を俯瞰して鑑賞せざるを得ないじゃないですか。当時は「この人が好きだ」みたいな気持ちで書かれた楽曲だとしても、どこか高尚なものとして受容する立場が強いし、実際のところは誰にも分からないし。なので、「こういう音楽ですよ」「こういう楽曲ですよ」というイメージを言葉で紹介していく感覚が強かったんですよね。心から言いたいことは音であって、それを言語化するとなると、包括的な言語表現になってしまいがちだった。でも邦楽洋楽を問わず、色んな作品に触れるうちに「自分もこんなにメッセージの籠った歌を歌いたいな」と強く思うようになったんです。


――音の性質を言葉に落とし込んでいくのではなく、自分の内側にある思いを少しずつ表していこうと思った。

そう。音楽を引き立てるための言葉だけじゃなくて、言葉を引き立てるための音楽もしていきたいなって。「予感」の頃から個人的な感情を言うことは意識していたんですけれど、「セゾン」では今できる最大のアプローチができたんじゃないかなと。



――今のお話を踏まえると、「セゾン」はここまでKhamai Leonができた主観的な表現への挑戦に対する1つの成果だと言えるじゃないですか。では、今作で言葉をより前景化させることができたキッカケは何だったのでしょう。

1番は沢山のライブを通じて、お客さんとコミュニケーションを取るようになったからじゃないですかね。MCで言葉を伝えたり、会話を交わすこともできますけど、歌詞を通じてみんなと喋れるようになりたいなと思うようになったので。あと「セゾン」に関しては、愛する仲間たちと音楽を続けていくにあたって、その儚さを身に染みて感じたことも大きかったと思います。


――「セゾン」の楽曲紹介にも書かせてもらいましたが、今の尾崎さんはメンバーの皆さんやお客さんに対する愛を包み隠さず届けるモードにありますよね。

間違いなく。自分自身を真っ直ぐ出すことには恥ずかしさもあるんですけど、「察してよ」ってしているだけじゃ伝わらないし、不完全燃焼で終わるなと。何もない僕と一緒に音楽をやってくれたり、着いてきてくれる人がいること自体、心から有難いなと思うんですよ。


――自分をさらけ出す恥ずかしさを振り切ってでも、素直でいようと思えた背景は何だったのでしょうか。独立を経て、音楽を続けられる尊さを感じたことやライブでの交流、色んな要因があるとは考えていますけど。

さっきもお話させてもらいましたが、『ONE PARK FESTIVAL 2024』への出演が1番大きい出来事だったと感じています。自分の好きなアーティストと同じステージに立ち、お客さんが見てくれたことに対して達成感もありましたし、大きな影響を受けているサカナクションとご一緒できたこともキッカケになって。もちろん、一生懸命練習をしてステージに立つことは大前提だとしても、泥臭く音楽をやることって格好良く見られないじゃないですか。というのも、努力を見せないとセンスがあるように見えるし、いわゆるスターっぽいから。でも、サカナクションの皆さんは本当に真っ直ぐ音楽と向き合っていらっしゃって、戸惑いや迷いを抱え、それらを曝け出した結果サカナクションというバンドになっていた。その姿を見ていたら、「覚悟を決めなきゃいけないな」と思うしかなかったんですよね。


『風の谷』

――ここまでお話いただいた「予感」「meteor」「セゾン」の3曲を含むEP『風の谷』が4月30日(水)にリリースされます。Khamai Leonにとって初めてのEPとなる本作にこのようなタイトルを掲げた理由は何だったのでしょうか。

これまで1st アルバムに『hymn』、2ndに『IHATOV』というタイトルを掲げてきた中で、段々と場所が具体的になってきた感覚があるんですよ。僕らは山や海のような自然を好みながらも、コンクリートに囲まれながら生きていて、その中で自分たちのオアシスを作り上げていくことを変わらないテーマにしている。で、表題の『風の谷』は、風の谷プロジェクトという企画に由来しているんです。そのプロジェクトは一極集中型の現代において各地に魅力的な空間を作ろうとする試みなんですけど、その思想や名前に共感してメンバー全員で即決したタイトルですね。



――このEPと風の谷というエリアを掲げ、5月19日(月)からツアー『風の谷 -valley of wind-』がスタートします。どのような旅路にしたいですか。

自分たちは色々なライブシーンに顔を出させてもらっていますし、まだまだ旅人だと思うんですよ。で、特に今年はEPを掲げて、ふわふわしながらも後ろについてきてくれる人を探すというか、同じ船に乗ってくれる人を探していく段階にあって。漂っている感覚もあるけれど、方向性を見失っているわけではなく、どこへでも旅をしていける自信と一体感を味わってもらいたい。だからこそ、そういうものを指示できるEPとツアーにしたいですね。


取材・文=横堀つばさ

 
 
 

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